昨日は気温が23℃で、四月のような気候でしたが、
今日は打って変わって、最高気温が7度と真冬に逆戻り。 
皆様、体調を崩されませんように。

さて今日は、忙しくて、しばらく「栞の会」をお休みするという、
K.Oさんから、原稿を戴いておりますので、それから、ご紹介したいと思います。

紹介者:K.Oさん

2020年に出版され、当時本屋大賞にノミネートされたこともあり、
訪れた書店ではことごとく売切れで、3軒目でやっと手に入れた経緯があります。

この度TVドラマ化された(全3回)のを機に再び読んでみました。

 

都会でのアパレルショップの店長の仕事に行き詰まりを感じた都(みやこ)は
鬱病になった母の介護のために茨木の実家に戻る。

そこで回転寿司職人の貫一と知り合う。

事情があり、中卒で、その後無職となった貫一との将来に不安を覚えている。
貫一はいつも淡々としていて、住居やお金、将来に無頓着で、
都といさかいを起こしてしまう。


そして……

都はアラサーの女性で、明確な人生のビジョンも持てず、
彼氏は優しいけれど、自分にそれほど執着もしていないような無職で中卒。

結婚したら絶対後悔しそう

でも1人も寂しい……

 

山本文緒の小説は何処にでもいそうな平凡な人間が沢山出て来るが、
そのどれもが親近感の持てる愛しい存在。
その描き方がとても上手いと思う。

最初と最後にベトナムでの婚礼のシーンが盛り込まれているが、
都がニャン(ベトナム人の若者)と結婚したのかと錯覚するが、
良く読むと、時が流れ、都と貫一の娘の結婚だったことを知る。

このシーンは余計だったような気がしてならない。

紹介者:A.Oさん


紹介者:M.Sさん


リラの花咲くけものみち
藤岡 陽子
光文社
2023-07-20
紹介者:M.Sさん


紹介者:M.Sさん


山と言葉のあいだ
石川美子
ベルリブロ
2023-11-22
紹介者:M.Sさん


おいしいふ~せん
角野 栄子
NHK出版
2023-11-07
紹介者:M.Kさん


紹介者:M.Kさん


紹介者:M.Kさん


紹介者:A.Nさん


 朝日新聞の書評欄に、藤田香織という書評家が
「打率十割のヒリヒリとギミック」という見出しで本書を紹介していたので
<ギミック>とはなに?と興味をそそられ、全く知らない作家でしたが読んでみました。
恥ずかしながら<ギミック「gimmick」>とは、
「巧妙なしかけ」「策略」を意味するただの英語でした。
藤田氏によれば震えが来るほど凄い本なのだそうです。

 来ました、震えが!血圧が上がる!

 本作は5つの短編が載せられ総括的な見出しが付いています。

 これらの題名は曲やアニメとかち合うみたいですが、本歌取りなのかどうか?
深堀りをする暇はないので70代のおばあさん読みで感想を述べさせていただきます。

「あなたのママじゃない」
BE MY BABY
「デイドリームビリーバー」
「ビターマーブルチョコレート」 
「まだあの場所にいる」

は引っ越しの準備をしている働く妻と主夫の話。
「ハア?!」と3分の2くらいのところで来ます。
でもこれは読者の思い込みによって生じたギミックに過ぎない軽いもの。

、これが一番血圧が上がりました。
4分の3くらいのところでのギミック。
大企業に就職が決まった女手一つで育てられた大学生の話ですが、
ギミックの文章に来た時、私は何度ミスプリではないかと読み直したことか?
これも読者の思い込みと言えば思い込みによるもの、
作者は嘘は書いていないのですから。
もっとも小説はもともと嘘ですが。

は、極貧の生活をしながらアニメ画家になろうとしている男と、
同志として同じくアニメ画家を目指していた今は
亭主の暴力に悩んでいる元カノの話。
これは特にギミックに出会うことはなくまともだと思いました。
アニメの筋書きと彼らの生き方を重ね合わせた
なかなかうまい書き方の切ないお話でした。

は中流夫人に収まっている、だが育児に一人で悩んでいるママと幼馴染の話。
ママが実家(貧しげなアパート)に里帰りし、ここで隣の部屋に住む、
父親の死により介護から解き放たれた孤独な幼馴染と出会います。
この古き友人が命令口調でママに意地悪をし始める。
「えーっつ!」が真ん中くらいに来ますが心臓の位置はすぐに立て直せました。

最後に「ふーん、そうか!」と納得できるギミック、
よく読んでいれば十分伏線はあった書き方です。
ミスコンが禁止になって代案の文化祭でダンスを披露することになった
女子高のクラスで繰り広げられる転入生と在校生との話です。

 ぜひ読んでみてください。なかなか「良い本」だと思います。
なにかと「もやもや」が多い時代、
その「もやもや」が、忙しくて自覚されずに過ごしていたり、
自覚されても解決法が分からない・・・
それは、世の常識や仲間うちの暗黙の規定や思いこみ等に縛られているから。
それを他人に気づかされ、「ずーっとそこにいるつもり」状態から脱却し飛び立つ、
人生の応援歌です。

 著者はギミック手法で読者を、「ずーっとそんな読み方をするつもり?」と
警告したのかもしれません。


九十歳のラブレター
加藤 秀俊
新潮社
2023-12-25
紹介者:A.Nさん


 朝日新聞の書評欄に取り上げられ、著者が、私が在学中の時
社会学のゼミを持っておられたことは知っていましたが、
他人の書くラブレターに興味なしと、手にとることはしませんでした。
が、定年直前でご主人を亡くされた友人が、私のためになる本、しかも名文、
と何度も言ってくるので降参し、読みました。

 読み終わってジーンと心が温まる本でした。
特別な表現技法は見当たらないのに、こういう読後感を残せるのを名文というのでしょう。
お二人の紡いだ愛の世界が、私的な世界を普遍の文学作品に結晶させた、
こうまで愛し合える夫婦はなかなかいないと思います。

 著者の生きた時代は、戦争真っただ中(子供時代)、
60年闘争(この時デモに参加、小学校の時から知っていたお二人が出会う)、
70年闘争(今度は教授側)と激動の時代。
その間、国内外を問わずいろいろな所へ留学、転勤、引っ越し、
フィールドワーク等で転居をされ、かつ方々へ旅行。
奥様も色々なことに興味を持たれる方で行動の幅が広い、
しかも、著述が、思い出により話が過去に飛んだりする、
お二人がとも実に長生き等、巻末に年表が欲しかったです。

 晩年は人もうらやむセレブ生活。
世田谷の庭付きの一戸建てにお二人仲良くいたわり合いながら、
鳥の声に耳を傾け、庭木の成長を眺め、ゆったりとデパートで買ってきた朝食をとる、
部屋には花屋さんで定期的に買っている花がいっぱい、いい香りが放たれている…
エトセトラであります。
しかもギリギリまで行きたいところに出かけ、車いすで海外旅行もする。
目的地についても無理と思ったらその時点で引き返すという実にぜいたくな行動派。

 ですが、奥様は早くから心筋症を患い何度も入退院を繰り返す、
著者も若いころに胃の手術をなさり胃の何分かはない、
そのほかに老人が出会う定番の数々の病気。
奥様の介護のために著者は90近くまで運転をしないわけにはいかなかった、
当然ながら事故も起こした。
もしかして普通の人以上にご苦労なさった方たちと思われました。

 そんな描写はあるのに、書き方が静かなのでしょう、きつくないのです。
辛くないのです。
お二人の幸せな時間のほうを共有できたのでした。

 友人は自分には出来ない望みだけれど、あなた方ご夫婦は仲良く長生きしてね、
「思いやり」が大事よねと読後感を寄せてくれました。
私の感想は「遠慮なく何でも言える関係」でした。
実にこのお二人、特に奥様の方はああしてこうしてがお若いころから多いと思いました。
冷蔵庫が日本にない時代、留学先のアメリカから日本に運びたいとか、
田中一村の絵を見に奄美に行ってもすぐ帰りたいとか、
せっかくだから貴方だけ見てらっしゃいとは言わない。
著者の方もお若い頃留学して何年も奥様を日本で待たせたとか、
海外赴任には多少無理でも家族に同伴させたとか遠慮のないお二人であったようです。
お互い、言いたいことを言って実現するよう二人で知恵を働かす。これです。

 お薦めの本です。本の表紙の銅版画が素敵です。

紹介者:A.Nさん


 「九十歳のラブレター」の読後、奥さんを亡くしてから
後追い自殺をして世間を騒がせた知識人・江藤淳がいたことを思い出し、
彼はラブレターを書いたかしらと探してみました。

 書いていました、がこれはラブレターではなく闘病記でした。

 元気だった奥様が、不調を訴え、体のあちこちに癌ができて余命半年、
告知しないまま入院、そのまま死を迎える。
その間子供のいない著者は近くのホテルに泊まりこみ毎日看病に、
やがて妻が死を迎えるころ、ご自身も前立腺炎症という感染症にかかり、
病を抱えながらのお葬式。それが終わるとまた再発、入院、皮膚の手術。
その後脳梗塞の発作。(この発作が自死の理由だと遺書に書かれていたそうです。)

 大変なご苦労のなか、退院して人心地ついた頃、
編集者に薦められ本書の刊行となりますが、凄い反響だったとあります。
有名人ですし、同じ病を抱える人にとっては看病の大変さの代弁になっていて共感できる、
そういうことでしょう。

 このあと著者は絶筆になりますが、「幼年時代」を執筆し
ご自身の一代記を書こうとしています。
奥様との思い出ではなく。

 あとがきで古くからの親友の石原慎太郎が、
彼の思想は軍人系列の家に生まれ、戦争ですべての名誉を失ったところから来ている、
と書いていますが、確かに本書を読んでいても
著者の出自へのプライドがちらちら感じられました。
奥様との思い出ではなくご自身の一代記に筆を執ったのは、
奥様との愛より自己愛が先行したのかなと思いました。
ではなぜ、完結しようとしないで自死したのか?
奥様が亡くなったのは199811月、次の年の77日に本書刊行、同月21日自死です。

 著者の論敵・吉本隆明は、追悼文の中で、遺書を見ると、
これでもかこれでもかと追い打ちをかけて来る病苦。
脳梗塞で形骸化された、つまり死んでしまってから死ぬより、
自分の意志で「すべては病苦によるもの」と死の理由を集約して死にたかったのではないか、
と結論付けています。

 旧友石原慎太郎は「典型的な妻恋いの末の後追い心中」と結論付けています。


紹介者:A.Nさん


 私が大学生のころに「社会学」という学問が新しい学問分野として
私には認識されましたが、成立の歴史はヨーロッパの市民革命・産業革命後、
日本には明治時代にすでに入っていたようです。
加藤秀俊氏の社会学の本、初めてですが面白いものでした。
著者も、鱗をはがせと読者を叱咤していますが、
「目から鱗」の連続でした。読んでみてください。
「そうだったのか!」池上彰さん以上です。

 一つだけ、大きな鱗を紹介します。
大正初めにハリウッド映画が輸入されてから戦争に入るまでの時期は
アメリカニズム真っ盛りの時代となり、
アメリカ化現象は戦後になってからではないということです。
戦争中の4年間の中断があっただけでずーっと続いていた。
当然英語・横文字は続いていて、雑誌や看板は横文字のまま、
いくら政府が禁止しても「ストライク」「アウト」は続いていたし、
野球は戦時中もやっていたと。

 著者は言います。
手元にある現代史を読んでいるとあたかも「戦前」が反米軍国主義の時代であり、
「戦後」がアメリカ文化の輸入による「民主化」の時代であったかのように書いているが
大いなる錯誤であると。

 他にもウロコちゃん沢山あります。
暇があったらご一読を!
それにしても大正時代というのはてんこ盛りの時代だったようですよ。

月の満ち欠け
佐藤 正午
岩波書店
2018-04-19
紹介者:A.Nさん


 「月」の好きな私、題名に惹かれ、究極の愛を描いた、直木賞受賞作、
岩波書店から出ている小説本、以上の理由で分厚い本ですが読むことに決めました。

 訳の分からない本でした。
ペンを手に相関図と時系列をメモしながら再読すれば物語の中身と作者の意図、
肝心な究極の愛とやらを読み取ることができると思いますが、
私には全くその気は起きません。

 文章が「愛を描く」にしては記事文・報告文で、飾りがありません。
しかも長々と続く。
簡潔にまとめて説明すればいいところを、直接話法で長々と読ませる。
本著は書き下ろしで著者は書きながら空想を広めていくタイプの方なのだそうですが、
もしかしてどう纏めたらいいか分からなくなったとか?まさかです。

 月の満ち欠けをヒントに転生をテーマに究極の愛を描きたかったのでしょうが(?)
行ったり来たりはほどほどに。
月の満ち欠けは実に規則正しく進むのですよ。   

 私には無理ですが、直木賞をとっていますし、映画化されていますし、
ベストセラーとありますからこのような本を簡単に読みこなし、
ホラーすれすれの話が好きな方は沢山いるのだと思います。
興味のある方はぜひ。


水の月
中江 有里
潮出版社
2022-05-20
紹介者:A.Nさん


 著者については、女優としては見たことがなく、
本の批評の番組に以前よく顔を出していて結構顔なじみでした。
書評家が書く作品ってどんなの?と興味が沸き手にしました。
題名にも惹かれました。「水の月」とは何?

 別にどうということはありませんでした。
父母の離婚によりそれぞれの親に引き取られ、
生き別れになっていた姉妹が、母の癌発病を機に手紙・メールのやり取りを始め、
やがてそれぞれの家族を含め付き合いを始め、
家族のきづなを取り戻していくという内容です。

 終始、口語のメール文になっていて、このような形式の作品は読んだことがなかったので、
完読できるか不安でしたが、すぐに読み切りました。

 離婚を伴って別れた家族が、実際にはこんなに簡単に仲の良い関係を気付くことは
ほとんどあり得ないと思いますが、まあ、願いを込めて描いたのかもしれません。

 しかし「水の月」の題名はいけません。
途中に「月に癒される」という表現は一か所ありましたが、
最後の頃になって「そばにいなくても、誰かが見ていてくれる。
空の月も、水面に映る月も。そう感じることができれば生きていける」
と出してきて、最後「月に見守られているんだよ。同じ月に。」
などと終られると月に申し訳ない、
表紙を飾っている千住博さんの絵「月下」にも申し訳ないですよ。
日本人が古くから歌に読み愛してきた月の題名を付けるなら、
途中にもっと月を出してきて姉妹の心の有りようを照らし出さなければ。
とってつけたように出さないでください。
「水の月」って「水面に映る月のこと?」
確かに表紙の水面に映る月の絵は素晴らしい。
以上でした。


最初の質問 (講談社の創作絵本)
詩:長田弘  絵:いせ ひでこ
講談社
2013-07-26
紹介者:A.Nさん


 長田弘の詩は難しいもの以外は大好きで、
しかも出身が福島市なので親近感がわく私なのです。
朝日新聞に紹介されていました。

 「今日、あなたは空を見上げましたか?」で始まりどんどん風景が広がってきて
「あなたにとって、あるいはあなたの知らない人びとにとって、
あなたを知らない人びとにとって、幸福って何だと思いますか?」
となかなか難しい問いかけで終わります、が最後に
「時代は言葉をないがしろにしているーあなたは言葉を信じていますか。」で終わるのです。

 言葉が軽くなっている今の時代に怒りを感じている詩人なようです。
私の答えは「信じられる世の中にしたい。」かな?
だってホモサピエンスの3条件の一つですもの、大事にしていきたいです。
日本人が好きな、空気を読む、とか行間を読み取る、
をやめにして言葉を信じて大事にしたいと思っています。

 



天路の旅人
沢木耕太郎
新潮社
2022-10-27
紹介者:M.Hさん


秘境西域八年の潜行 上巻 (中公文庫 に 11-1)
西川 一三
中央公論新社
1990-10-01
紹介者:M.Hさん


秘境西域八年の潜行 中巻 (中公文庫 に 11-2)
西川 一三
中央公論新社
1990-12-01
紹介者:M.Hさん


紹介者:M.Hさん


紹介者:S.Mさん


季節を知らせる花
白井 明大
山川出版社
2014-06-01
紹介者:S.Mさん


紹介者:T.Yさん


ルイジンニョ少年: ブラジルをたずねて
かどの えいこ
ポプラ社
2019-01-08
紹介者:T.Yさん


Life(ライフ)
くすのき しげのり
瑞雲舎
2015-02-27
紹介者:T.Yさん


紹介者:C.Tさん

紹介者:管理人A



紹介者:管理人A



春雷 (祥伝社文庫)
葉室麟
祥伝社
2017-10-06
紹介者:管理人A


琥珀のまたたき (講談社文庫)
小川 洋子
講談社
2018-12-14
紹介者:管理人A