長かった酷暑とも、さようなら。
秋らしい気持ちの良い日々が続いています。 

今月は久しぶりで若いママの参加があり、
かわいい赤ちゃんのお顔を拝見することができました。

さて、今月のご報告です。


おばさん四十八歳 小説家になりました
植松 三十里
東京堂出版
2013-12-10
紹介者:A.Nさん

 卒業生で作家と言えば、瀬戸内寂聴・有吉佐和子・永井路子・
黒田杏子(物故)・松岡和子・高木のぶ子・中島京子・・・
私の知っている有名人が結構いますが、
いずれも本を読んでから卒業生であることを知る、という順序でした。
が、植松五十里さんは「栞の会」で卒業生であることを知ってから、
本を手にとった方です。
しかも現埼玉支部長が来年の講演会の招聘に成功、
「ぜひ読んで」との推しの本著、読みました。

 ズバリ、自称でなく他称丸出しの「おばさんの本」でした。
本の表紙がいい!<おっちょこちょいおばさん>ついでに漫画にしちゃえば、
と始めのところを読んだ時は思ったのでした。

 しかし、実に含蓄のあるいい本でした。
歯切れのいい文章と報告するような語り口ですぐに読めてしまう本でしたが、中身は盛沢山。
小説家希望の方必見!いや、必読!子育て中の方必読!
働く婦人必読!女子大在学中の方必読!卒業生の方必読!
引退したおじさんもおばさんも必読!
埼玉支部の方は来年の講演会の前に読まれると、
期待の風船が膨らむと思います。
風船は膨らむか?凋むか?破れるか?
ともあれ読めば元気になれる本であることは保証します。

 私の読後感を言わせてもらうと、彼女の清純ともいうべき「正直さ」と「謙虚さ」
「優しさ」、それに加え小説家になりたいという「一途さ」と遂行の「エネルギー」、
そして何よりも彼女は「知力の人」でありました。
ただのおばさんではありませんでした。

 思えば新田次郎文学賞を始めいくつかの賞をとられているし、
著書も多く、他称おばさんとか漫画にしたらいいとか、
私のほうがおっちょこばあさんでした。 

紹介者:A.Nさん

 植松さんの本を読むのは5冊目です。
本書は2019年5月初版、集英社文庫のための書き下ろし作品のようです。
植松さんの短いセンテンスが幕末の騒乱を動的に生き生きと見せていると思いました。
尊王攘夷派と佐幕派、徳川慶喜と孝明天皇、
公家たちのやり取りも、中編なのに簡潔にまとめられ、
それぞれの人物が生きているように感じられ、
福島県郡山生まれで夫は山口県の私に、改めて会津松平容保の実像が見えました。
「徳川最後の将軍 慶喜の本心」より出来がいい作品だと思いました。

植物考
藤原辰史
生きのびるブックス株式会社
2022-11-17
紹介者:A.Nさん

「植物って動いているのよ。」
友人(同窓生)に薦められて読みましたが、
脳みそのニョロニョロが解きほぐれるような発見でした。

 著者は、日本の農業史研究者、京都大学人文科学研究所准教授。
専攻は、農業史・食と農の思想・ドイツ現代史と、
植物を相手に人文科学の見地から研究している方です。
例えば論文は<ナチス・ドイツの有機農法:
「自然との共生」はなぜ「民族の抹殺」に加担したのか>、
こう聞けばどんな研究か見当がつくと思います。

 本書は「人間は植物より上位に位置する生物なのだろうか?」が出発点です。
植物を人間の仲間に入れて、同じ目線で、
作物としてでもなく食物としてでもなく考えます。
「植物は動くか?」「植物は思考するか?」「感じるか?」「哲学するか?」等。
こういった学問はアリストテレスの時代からあって、
ゲーテやルソーも論じて来たそうです。
その「知」の在り方に戻ることこそ、
これからの時代を生きるヒントになるはずだと著者は言います。

 植物の進化の歴史や形態・機能(自然科学)を丹念に探りながら、
私たちと植物の関係性、ひいては他の動物や住処であり地球にまで論は広がって、
目からうろこが落ちますので一読をお薦めします。

 ここで終わったほうが親切なのですが、私の感動を一つ書かせてください。

「葉のない植物」の項です。
4億1700万年前の岩から出土した世界最古の陸上植物の化石「クックソニア」は
葉がなかったのだそうです。
ここからこの植物は4000万年から5000万年以上かかって葉をはやし始めたそうで、
霊長類から人類が進化する時間の10倍の時間がかかったそうです。
植物に葉は必然ではありません。
ならばどうしてこんな葉を身につける羽目になったのか?
植物の葉が、二酸化炭素を酸素に変えてくれるお陰で、
酸素なくては生きられない私たち人間は生存できているのです。

某 (幻冬舎文庫)
川上弘美
幻冬舎
2021-08-05
紹介者:A.Nさん


 前回の栞の会での紹介で、不思議な小説だとしきりに不思議がっていた
Aさんの様子に惹かれ、読んでみることにしました。
次々に変身できる人間でない人間の「某」が繰り広げる話です。

 私に言わせると、不思議などという高尚な香りは感じられず、
訳の分からない本でした。
私の読みが弱いのでしょうが。
ただ、次々に出てくる「某」の名前と、どんな某だったか忘れてしまう、
老人特有の縮んだ脳に辟易しながらも、
作者が何を言いたいのか?どんな世界を作ろうとしているのか?
と思いながら、結構分厚い本を読み進むことを私にさせてしまうのは、
作者の力量に違いありません。
しかも、最後の頃、愛し合ってしまった某二人が、
電車に乗って出かけるところがあるのですが、
道行く人間たちを観察しながら、「人間て面白いね」とか「楽しそうだね」とか
「たましいってなんだろう」と語り合う場面に、
不覚にも私は涙してしまうのでした。
人間になれない某を通して、作者は人間賛歌を言いたかったのかしら?
少なくとも、我々は人間であるしかないのだと問いかけているのではないか?
そう思いました。

 最後は、愛し合った二人のうちの一人の某が死に、
もう片方の某が見送る美しい場面で終わります。
「だれかをまた好きになりたい」そう言って星の瞬きを見つめる、
月並みな(でも私の目からも涙が・・)場面で終わるのですが、
これって人間になりたいということを著者は言っているのだと思います。

 某には、原則愛するという感情はない。
死もないらしい。ではなぜ死んだのか?
某たちの仲間は考えました。
愛とは他人のために生きるという犠牲を支払うこと。
その行為をしてしまったために死ななければならなかったのだと。
死んでもいいから「だれかをまた好きになりたい」と、
残された某に言わしめているということは、人間賛歌だと思います。
でも、著者はただ、某という得体のしれないものを思いつき、
彼らが繰り広げる世界を試験的に小説にしたかっただけ?
そうも思っています。ご一読を!

紹介者:A.Nさん


 著者は、現在神戸市外国語大学学長・教授で近世イギリス史がご専門。
固い学術書と思ったら、長いこと研究のためにおられたイギリスを中心に、
ご自分の体験や思いを自由に取り入れながら
「死」そのものを考えさせる幅の広い、一般読者を対象とした読み易い本でした。

 「死後の霊魂を扱う宗教にとっては、死はその中心的な課題と言える。
とりわけキリスト教は、イエスの十字架処刑に始まり、
初期協会の殉教者たちに見るように、迫害による死の上に築かれたといってもよく、
死はキリスト教の本質に深く根ざしている。
・・・・宗教改革による煉獄(死んでから最後の審判を待つ間に死者がいる場所)の否定と、
それにともなう死者への祈りや聖人のとりなしの否定は、
中世のカソリック協会が築き上げた死と死後の世界観への挑戦であった」

 そして宗教改革を巡るこれらの論議は今なお解決されていなく、
死と死者の魂を巡る問題、天国の存在は身近に常にあった、
ある問題なのに今なお混沌としている。

 カソリック・プロテスタントの両方を経験し、
ヘンリ8世が起こし、エリザベス1世で終止符を打ったイギリス国教会、
それらが今なお、すっきりとはいかず、複雑に存在し合うイギリスで、
日本の宗教観と絡ませながら先行研究を踏まえ、
「死」を考えてみたい、そんな本なのです。

 幽霊、疫病、葬儀、墓、モニュメント・・・
面白いので読んでみてください。
なぜ、あんなにもヨーロッパには人物像がここかしこに立っているのか?
王の墓石なのに踏んづけられるところに平気で置かれている、
遺体や白骨が平気で置かれる、土葬が出来ない現実問題等、
イギリス、いやヨーロッパの「死観」がほんのチョットですが、理解できます。

 読後感は、著者が結論付けているように、
今なおキリスト教世界でも「死」は分からず、
中世からの「メメント・モリ(死を想う」が続いている、
「死」は自分なりに考えるしかないようです。

トラスト―絆/わが人生/追憶の記/未来―
エルナン・ディアズ
早川書房
2023-05-26
紹介者:M.Hさん


光のとこにいてね (文春e-book)
一穂ミチ
文藝春秋
2022-11-07
紹介者:M.Hさん


紹介者:M.Hさん


13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海
田中 孝幸
東洋経済新報社
2022-02-25
紹介者:M.Kさん


90歳の幸福論 (扶桑社新書)
和田 秀樹
扶桑社
2023-03-01
紹介者:M.Kさん


紹介者:M.Sさん

 著者は都立高校の生物教師のかたわら、
半世紀以上にわたって東京都心および近郊の鳥類の観察を続け、
鳥類・昆虫の生態に関係する複数の研究会や団体に関わっている。

 この本の内容の構成は
「はじめに
第1章 人と鳥のソーシャルディスタンス
第2章 ツバメの「栄枯盛衰」
第3章 人類に随伴するスズメ
第4章 水鳥たちの楽園、「都市の水域」
第5章 都市生態系の頂点「カラス」
第6章 カラスと猛禽
おわりに」
である。
地球規模で気候変動がおき、また人間の住環境が常に変化している現代において、
我々の近くに生息している鳥たちはどう生きているのか。
どの章も、新しい知識を得て驚いたり、納得したり、読み進むのが楽しい内容である。

私自身、このニュータウンに越してきた30数年前には、
商店街のアーケードの屋根の下や、最寄り駅の天井にツバメの巣があり、
毎年ツバメの季節を迎えるのが楽しみだった。
今ではそれらの巣がきれいの取り払われてしまった。
駅構内の巣が取り払われた翌年には、
複数のツバメがやってきてそれぞれ巣作りをはじめたが、
駅員がすぐにとり壊した。
その翌年には1羽のツバメが構内を飛び回っているのを見かけるのみだった。

なので、「第2章 ツバメ栄枯盛衰」は興味深く読んだ。

以下、いくつか紹介する。

・ツバメが日本に渡来する時期が4月から3月へと年々早まっているー特にオスの場合。
・オスが渡来を急ぐ理由は(温暖化もあるが)営巣の事情。
 すなわち早く来て優良物件=巣作りに有利で、子育てに安全な=を確保するため。 
・つがいが毎年同じである確率は思ったより低い。
 春の渡りは危険がいっぱいで無事に両方が渡来できるか。
 また、メスは巣立ちのスケジュールから子育てを急ぐ為に、
 遅れて到着するオスを待ってはいない。
・営巣場所の変転― 都心のビルに毎年作っていた巣は、
 建物の改築で作れなくなり、郊外へ。
・ツバメの天敵は実に多い・・・ ・ひなの巣立ち後は人家から離れた葦原などの何千、
 何万羽という集団ねぐらで親子別々に過ごす。
 そして、南への渡りも別々で成鳥は8月下旬から、幼鳥は9月下旬に飛び立つ。

著者は「おわりに」で述べている。
「カラスやツバメ、スズメなどの身近な鳥の生活は、人に依存しつつも人との距離を保ち、
ときには人を利用しながら生き延びようとしている。
都市鳥の生き方は現実的であり、柔軟でしたたか。
しかも我々が気づかないような新しい環境の利用法や適応力も備えている。」


スヌーピーの会話術
香山 リカ(監修)
リベラル社
2023-07-24
紹介者:M.Sさん

 著者(監修者)は、精神科臨床医、総合診療医、
現在はへき地医療にも取り組んでいる。
精神科医としての経験から、それぞれの悩み=主としてコミュニケーション=の解決法を
スヌーピーのマンガの一コマを例示しながらアドバイスする。

目次は次のようである。
それらの章の中からひとつだけ挙げてみる。

「はじめに
1. 自分を守る会話術 ―人との違いを指摘されたら、ほめ言葉と受け止める
2. 仲を深める会話術 ―信頼関係のある友だち同士、ときにははっきり言うことも大切
3. 視点を変える会話術 ―正面をはずす返球はちょっと相手をかわすテクニック 
4. 言葉のいらない会話術 ―どちらかだけでなく、どちらもいいとこ取りで楽しく解決
おわりに」 

先に紹介した「心をとらえるスヌーピー」が
禅による人生のとらえ方を述べているのに対し、
こちらは、より日常的な場面での対処法を紹介する。

 相変わらず、スヌーピーの世界に癒される。

紹介者:Y.Oさん


万事オーライ 別府温泉を日本一にした男
植松 三十里
PHP研究所
2021-08-20
紹介者:Y.Oさん


帝国ホテル建築物語 (PHP文芸文庫)
植松 三十里
PHP研究所
2023-01-11
紹介者:Y.Oさん


「古本食堂」原田ひ香
ノーブランド品
紹介者:Y.Oさん





紹介者:S.Mさん


西の魔女が死んだ(新潮文庫)
梨木香歩
新潮社
2022-05-27
紹介者:R.Hさん


懲役病棟 (小学館文庫)
垣谷美雨
小学館
2紹介者:T.Yさん023-06-06



家康の海
植松 三十里
PHP研究所
2022-12-08
管理人A


「栞の会」では、同窓生である植松 三十里さんの著作がたくさん読まれています。
今回Yさんからお借りして、初めて読みました。
歴史に基づいた、家康の国家観、世界観が描かれています。
史実はよく調べてあり、家康が、どのような日本を築き上げていきたいのか
その努力の結果が、長い徳川時代をもたらしたのだということがよく分かりました。
ただ、たくさんの人物が登場しますが、いずれも、描き方に深みがなく、
小説の中で、人物が動き出さない。
まるで、静止画を見ているような印象に終わりました。
作品の出来としては、今一つのような気がします。