今日は、3月3日お雛祭りです。

昨日は22度と4月下旬の気温、今日は2度で、小雪が降る日1日でした。
明日は今日よりも多い積雪がある予報です。
気温の変化が激しく、皆さま体調にお気をつけてお暮らしください。

2月の「栞の会」は管理人体調不良で、アップも今頃になり、失礼いたしました。
Y様より記録を戴いておりますので、それを掲載したいと思います。

記録を見ていますと、面白そうな本がずらり。
皆様のお話を聞きたかったなぁ、と思いました。

紹介者:A.Nさん

 政治家の総理大臣着任時の演説、開戦に当たっての所信表明、
総理にならなかった人は選挙前の演説等が抜粋して紹介され、著者の解説が付いています。
演説(新聞)そのものを読ませることにより太平洋戦争の実像に迫る、そんな手法です。
昭和3年の普通選挙が始まる前の年に田中儀一が選挙に向けての意義について語るところから
鈴木貫太郎が戦争終結のために総理になる所信表明演説までが掲載されています。

戦争になるのは避けたかった、けれど誰がやってもそのすべがなく、
刻々と臨戦態勢に入っていき、最後は無能と知りながら東条英機に丸投げして開戦、
19447月小磯国昭総理に任せたものの約9カ月で解散、
壊滅状態を認識してもぐずぐずと終戦に踏み切れず、
最後には老齢の鈴木貫太郎を引っ張り出して
軍部の反対を押し切ってポツダム宣言受諾、
やっと終戦、流れが実感できました。
著者の解説が若干ステレオタイプだとは思いましたが。

天皇も政府も、軍部の暴走で自分の身が危なくなるのを恐れてはいますが、
それよりも恐れていたのは国民の無知による暴動だった。
今になって戦争回避のためにアメリカの提示する条件を呑もうと国民に提示しても、
何を今さらと暴動が起きるだろうという諦めで開戦したのです。
命を懸けて国民を説得する時間と勇気がなかったのは悲しいです。
国民には命をかけて戦えと言っているのに。
戦争に突入していく怖さはよくわかりました。
マスコミの役目は本当に重大だと思いました。
国民にありのままを伝えようとする姿勢と努力が大事ではないかと思いました。
国民を喜ばす情報ではなく、マスメディアとしての使命を自覚し、
常に論戦を交えることが出来るための情報を掲載していく。

斎藤隆夫(立憲民政党)は昭和前期で最も気骨ある政治家ということだったそうですが、
152月に行った「反軍演説」=日中戦争勃発直後、が素晴らしいですから
機会があったらお読みください。
もちろん彼は太平洋戦争中は発言を封じられていました。

戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗
加藤陽子
朝日出版社
2017-08-10
紹介者:A.Nさん



「それでも日本人は『戦争』を選んだ」に続く主に高校生を対象に行った講義の第二弾です。
第一弾より実に細かく難しい資料を読み解いていく根気のいる授業で、
著者と講義について発言をしながらついて行った生徒たちに、
「頭がいい人は根気もあるのだなあ」と感心、
私は途中から拾い読みに変わり読了(?)となりました。

拾い読みの中で最も私が関心を持ったのは、開戦前の天皇とまったく相反する立場の
尾崎秀実(ゾルゲ事件のスパイ)の国民観が一致しているということです。
どちらも、満州事変の時から正しいことを知らされなかった国民に、
今更経済的に開戦は無理と言っても国民は納得しないだろうと言っているのです。
尾崎は、屈服が正しい選択だったとは国民は負けた後でなければ
認めないだろうと語っています。
天皇は、国際連盟脱退も日独伊三国軍事同盟締結のときも、
自分は平和のためだと詔書を出したのに
国民は英米に対抗するためだと思い込まされている、
と日米交渉が難しくなってきた41年に内大臣の木戸に向かって嘆いています。

 今は天皇の詔書や政府の刊行物はすべて新聞に載っている。
それをよく読んで扇動に走らない人間になること、そのための教育、
それを目指して著者は学者として講義している、行動する学者だと思いました。

最後に、なぜマッカーサーは天皇制を廃止しなかったのか? 
経済的な面で天皇を利用する方が得策だと考えたとありますが、
共産国との本当の戦いが始まると見たからなのでしょうが、
ここをもっと詳しく聞きたかったです。


宇宙論と神 (集英社新書)
池内了
集英社
2014-09-26
紹介者:A.Nさん


宗教=神が天を差配している(名指しはしていませんがキリスト教に決まっています)、
という観念が強くなると神の存在を求めたくなり、
ではどこまで差配しているのだろうか?と調べたくなる。
そうやって多神教のアリストテレスが考えた天動説を越え、
ガリレオガリレイの望遠鏡の発明以来、実証を伴った研究となっていき、
さらなる天体観測機器の発達向上により、
神の居場所は今や数キロメートルの大きさから
観測可能な138億光年の宇宙の地平線へと広がった。
では神の存在はどこか分かったか?
それが今もってわからず、机上学の方も素粒子理論や重力理論が複雑になり
手が込んできて著者がもうついていけないほどの体をなしている。・・・

「ほとけは常にいませども うつつならぬぞあはれなる、
人のおとせぬあかつきに ほのかに夢のみえたまふ」、
御年80歳の著者は、大好きな梁塵秘抄の言葉で本書を始めています。
今でこそ天体学はしっかりと分野として根付き研究者も膨大になっているそうですが、
始めは引退した物理学者の手慰みの学問だったのだそうです。
本書も著者が余裕をもって手慰みに楽しんで書いていると思われます。
私は、細かい天体の話や数式はついていけませんから飛ばして読んだのですが、
全部理解して読んだとしても「うつつならぬ」内容だったに違いありません。
読後はほのかな夢から覚めたようでした。
もっとも、物理学者や天文学者は東西を問わず
こんな心構えがないとやっていられない学問なのかもしれません。
でも、こんな歌など歌って終わっていたから
日本は天文学が発達しなかったのだとも思いました。
現在の学者は神を心に抱いて研究をしているのでしょうか?


紹介者:A.Nさん


母親のような温かみのある文章、
丁寧に書かれていて中・高校生くらいに分かりやすく語られた講義のよう。
同じことを繰り返して書いていると思いましたら、
「トイビト」に毎月書かれたものを纏めたとあとがきにありました。
発行は1924810日、なんとこの著者1936年生まれなので88歳です!

「人類はどこで間違えたのか?」答えは狩猟時代から農耕時代に入った時だそうです。
それまではみな平等で、感謝の気持ちを持って動物や草木を食べる量だけとって
分け合って食べていたのに定住を決めてから人口も増え、争いごとが多くなり戦いへ。
著者は生命科学者ですから書いていることは最初の方はなかなか難しいです。
近代科学によって新たに登場したゲノム研究(全遺伝情報)、
それによってヒトの命は40億年前の生命の誕生から今もって繋がっている、
細菌も生きているもののDNA はみな同じで、
「私たちは生き物の中の私」である。

そこで提唱されたのが「生命誌」という学問で「私たち生き物の中の私」を探る学問です。
そうなると幅広い知識と実践が必要となったようで、
本書は幅広い分野にわたって深く「生命誌絵巻」を繰り広げます。
そして、本来歩き始める道を選択しそびれたのだから
「生きものである人間の本来の道を探す=土の大切さ」にたどり着きます。
その地にあった農業、地産地消の提唱です。

読みながら狩猟時代を美化しすぎ? 
と思いましたが、そうではないらしいです。
長年の研究で、もちろん助け合うためにリーダー格はいましたが
戦争はなかったそうなのです。
人間は誕生した時から論争、闘争が好きで好戦的なDNAが組み込まれていると
思っていた私には、人間の歴史で戦争がない時代の方が
ずーっと長いなんて夢みたいです。

88歳の著者が最後に、今の時代がとても心配だと書いているのが身に沁みました。
戦争を生き延びて、何とか戦争のない国へと学問をし実践してきた老人に、
今もってそんな気持ちを抱かせる進歩しない頭脳を持ったヒトとは何なのでしょう? 


人魚が逃げた
青山 美智子
PHP研究所
2024-11-14
紹介者:A.Nさん


和光・三越・木村屋が立ち並ぶ銀座中央通りの歩行者天国が舞台で、
アンデルセン童話の人魚姫の王子が、
王子そのままの素敵なコスチューム(もちろん顔も姿も美しい)で現れ、
人魚に逃げられた、と騒いでいる。
テレビ局がインタビューしSNSでも騒がれる。
その王子をタイミングよく登場させて、
職業も置かれた状況も違う主人公たちが作者お得意のオムニバス形式(5章)で、
恋について、親子関係について、夫婦関係について葛藤と和解が語られます。

この作者の本はいつも読者に幸福を呼び込んでくれます。
少し見方を変えれば、相手にきちっと確かめてみれば、
日常のさりげないところに目を配れば、悩みも迷いも解消される、
それを作者はいつも思いながら著していると思います。
とても啓蒙的な方で優しい方なのだと思います。
でも何冊も読むと彼女のしつこいほどの言葉=文章に少し辟易してきたかな? 
そこまで丁寧に言ってくれなくても分かるわよ、と言いたくなった私でした。

エピローグを読むと彼女が銀座を舞台として
ファンタジーな世界を作りたかったのが分かります。
私たちが小説の中に吸い込まれるのではなく、
小説の中の人物が私たちの世界にやってくる、
この発想は素敵な試みだと思います。
そんな素敵なお話なのに読後はうっとり感はあまり余韻として残りませんでした。

あら、作者の声が聞こえてきました。
「銀座ってそんなに素敵なところ? 
昔から金持ちも貧乏も、独り身もファミリーも、若者も老人も、
白人も黒人も銀ブラしてた。
今中国人多いわよ。ユニクロだってある。
銀座はすべてを飲み込んでくれる今ある人間のるつぼのはず。
そんな人間の世界に王子を飛び込ませたかったのよ。見方変えてみて。」でした。

 

月ぬ走いや、馬ぬ走い
豊永浩平
講談社
2024-07-10
紹介者:A.Nさん


紹介者:A.Nさん


紹介者:A.Nさん

少年が来る 新しい韓国の文学
ハン・ガン
CUON
2024-10-30
紹介者:A.Nさん


紹介者:M.Hさん


82年生まれ、キム・ジヨン (ちくま文庫)
チョ・ナムジュ、斎藤真理子
筑摩書房
2023-02-13
紹介者:M.Hさん


紹介者:M.Hさん





月の立つ林で
青山美智子
ポプラ社
2022-11-07
紹介者:A.Oさん


人魚が逃げた
青山 美智子
PHP研究所
2024-11-14
紹介者:A.Oさん


木曜日にはココアを (宝島社文庫)
青山美智子
宝島社
2020-06-04
紹介者:A.Oさん


すべての、白いものたちの (河出文庫)
ハン・ガン
河出書房新社
2023-06-02
紹介者:A.Oさん


紹介者:M.Kさん


紹介者:M.Kさん




紹介者:M.Kさん


紹介者:M.Sさん


この星のソウル
黒川創
新潮社
2024-11-28
紹介者:M.Sさん


父のビスコ (小学館文庫)
平松洋子
小学館
2024-12-06
紹介者:M.Sさん


紹介者:T.Yさん


















皆様、あけましておめでとうございます! 
今年も「栞の会」をよろしくお願いいたします。

昨年は11月に「拡大!!栞の会」、12月は休会でしたので、
しばらくぶりの開催でした。

また、今回は若い同窓生Tさんの参加があり、
新風が吹き込まれました。
次回も、また、参加してくださるそうです。
楽しみですね。

さて、しばらくぶりで、皆さんが読まれた本の紹介です。

紹介者:A.Nさん


蝶のゆくへ (集英社文庫)
葉室麟
集英社
2021-07-01
紹介者:A.Nさん


回復する人間 (エクス・リブリス)
ハン・ガン
白水社
2019-05-28
紹介者:A.Nさん

裏表紙に「強靭さと繊細さを併せ持つ清冽な文体で描かれた七つの物語」
と書かれてありますが、まさにその通りの本でした。

私たちが生きる辛さや悲しみを、丁寧に真剣に細やかな表現で書き決して飽きさせることなく
ぐんぐん読ませていく筆力、まだ、こんな見方があったのか、表現の仕方があったのか、
とちりばめられた言葉の使い方に驚きました。
そして、どんな結末でも先には光が見える終わり方をしているのです。
一つだけどう読んでも明かりが見えないのがありましたが。
みな読後にジーンと胸に来て涙がこみ上げました。
ノーベル賞を受賞しただけはある、そう思いました。
文学ですから普通の何でもないことを文で表現し共感を呼ぶ、
これって大事なことですよね。

自らの抱える問題を自力で解決しなければならない韓国人
(恐らく日本人もですが)の持つ大変さを思いました。
キリスト教を歴史に持つ民族は心の底に他力がある、
良い結果を生まない人生でも「神はいない」と叫ぶことができる。
神に恨みをぶつけることだってできる。
日本の神様は言葉を持たないし、仏様は訳の分からない呪文を唱えるだけ。
強いては座禅をして自力でいけと公言する。
多神教だったのに一神教を取り入れたヨーロッパ人は先見の明があったと言える?

それにしても韓国は救済の社会制度やもっとほかの仲間たちの交流はないの?
とも思いました。
すべての、白いものたちの (河出文庫)
ハン・ガン
河出書房新社
2023-06-02
紹介者:A.Nさん

その表紙は光沢のある白、モノクロの写真がまず目につきました。
本を横にしてよく見ると黒いワンピースを着た女の人が
ガーゼのような材質で出来た赤ん坊のワンピースのような物を膝にのせて、
胸下から膝下あたりまでが映し出されていました。

固い表紙を開くと真っ白なページがあって
そこを開くと半分に切り取られた白いページ、次のページに書かれた
「すべての、白いものたちの ハン・ガン 斎藤真理子・訳 河出書房新社」
というこの本の表題が小さな文字で見えました。
それはささやかでしたが「白」の上に載せられ、
しかと読み取ることができました。
次のページは目次、「1 私 2 彼女 3 すべての、白いものたちの」とあり、
「私」から読み進んでいくことになるのでした。

読み始めると、鋭い感性と血を吐くようにして紡ぎ出された文章が
それぞれ宝石のような詩のかたまりとなって白い紙の上に載せられていました。
しかも読み進むにつれ その白い紙は材質の違いで起こる4つの「白い」紙で
成り立っているのでした。

著者がこの本にかけた思いが本の装丁以上にひしと感じられた内容でした。
宝石が輝いていました。
私はなぜ生まれたのか?
生まれてきたことに意味があったのか?
そもそも私って何?
真実の私はどんな私?私の中で変わらないものあるはず、
それは何?私の進むべき道は?
そうした思いで完成されたこの本自体が著者自身に
「孤独と静けさ、そして勇気」を「呼吸のようにふきこんでくれ」る本となった
と最後に書かれています。
しかも「神を信じていない私にとっては、ひとえにこのような瞬間を大切にすることが祈りである。」
で終わっています。

書くことによって著者自身が救われる本になったようですが、
自分自身の存在などとくに考えたこともない私という読者には、
もともと求めていない救いなど見えるはずはなく、
ただただ素晴らしい宝石に出会った感動に涙するばかりでした。
いや、わずかながら75歳の私も、私とは何であったのか?
今は何であるのか?残された時間をどう生きるか?
加えて人生の幕をどう閉じたらいいのか?
しばし考えることになったようです。


少年が来る 新しい韓国の文学
ハン・ガン
CUON
2024-10-30
紹介者:A.Nさん


紹介者:A.Nさん

発行が202311月ですからこの日近くまでの10年間に
書き溜めたエッセイとルポルタージュが収められています。

題名は本書の中の「夜明けを待つ」という題の入管収容問題を扱ったエッセイからとった
と思われますが、著者が探求し続けて来た人間のあり様(「死から生へ」)は
いつも夜明けを待ちながら探っていたと思われぴったりの題名だと思いました。
素晴しい本でした。

本書で著者のルポ作家としての仕事に対する姿勢がよく理解できました。

著者は、2014年「紙つなげ」から2020年「エンド・オブ・ライフ」までの7年間、
まったく本が書けなくなって禅への関心から永平寺へ入ります。
その後チベットの山々や世界を放浪、ついにタイの佛教の寺院で修行に入ります。
しかし自分にはどうしても悟れないと煩悶し、
そのことを修行中の仲間に告げると、
自分に都合よく解釈された仏陀の教えが返って来たそうです。
そして思います。
「自分はここから出て現実に生きて、
人々の少し変だとか嬉しいとか悲しいとかという実際の姿を見、
言葉を聞き、信じて生きるのが一番だと。
そして下野し出来上がったのが「エンド・オブ・ライフ」だそうです。

もともと、大学時代からヨガに関心があった方で、
頭ではなく身体で世界を理解するタイプの方と思われ、
まさにルポルタージュ作家に尽きると思いました。
早世が残念でなりません。24911日死去。

夢も見ずに眠った。 (河出文庫)
絲山秋子
河出書房新社
2022-12-09
紹介者:A.Nさん

学生時代に知り合った男女が結婚し、熊谷育ちの妻はキャリアウーマン、
東京育ちの夫は少しずれたところがあるマイペース型の非正規社員。
子どもは居ず、妻の実家に同居して家族みな仲が良い。
が、その夫が鬱になり、妻も札幌に転勤移動となり夫を実家に残し単身赴任、
やがてふたりは結婚している理由が分からなくなり離婚。
それぞれ一人になってみて始めて、幼い頃から気兼ねし我慢して生きてきたことに気づきます。
そして「全は個にして個は善なり」、気兼ねや我慢もすべては必要なものとして準備され、
その流れで今(現在)があるという考えに至ります。
やがてふたりはよりを戻す、そんなストーリーです。

この作者はあとで調べると旅が大好きらしいのです。
ご当地ソングならぬご当地小説。
まあ、いろいろな場所にふたりは移動させられそこの解説がなされます。
その場所を描くことが特に物語のスパイスになっていないことも多く、焦点がぼけました。

「夢も見ずに眠った」の題名は読み取れませんでした。
小説中頃に一箇所、夫が学生時代に一人旅した盛岡近くの温泉につかりながら
「これで夢を見ず眠れそうだ」と幸福感に浸る表現があるので、
夢を見ず眠れることはいい意味で使っているのだと思います。
過去形ですから「幸福だった」ということになります。
ふたりの20年間の山や谷は意味あるもので「今」のふたりにつながっている、
思えば幸福な人生であった、これからの再スタートは明るい、
とふたりにエールを送る題名かしら?
ご一読後ご感想をお聞かせ頂けたら幸いです。

読み終わって見れば、あちこちの名所案内が書き過ぎと思うものの、
若い夫婦の波が静かに描かれなかなか良い小説だったと思いました。
さすが芥川賞受賞作家。

まぐだら屋のマリア

原田マハ
幻冬舎
2014-02-13
紹介者:A.Nさん

 題名から聖書の本歌取りとすぐにわかります。
新約聖書に登場する人物や地名が随所に登場します。
有馬りあ・(通称マリア)・紫紋(シモン)・丸弧(マルコ)・与羽(ヨハネ)・
湯田 真(ユダ)・桐江(キリエ)・花南(カナン)・名戯寺(ナザレ)等

 「マグダラ屋」とはの「尽果(つきはて)」と呼ぶバス停で降りると岬の先端にある淋しい、
近くの漁師たちが食べにやってくる食堂のことです。
マグダラ」とは、近くの漁場で何十年に一度かたまに捕れることのあるタラのようなマグロのこと、
能の「海人」伝説(省略)によく似た伝説を持っています。
ここの食べにくる漁師たちに慕われいる雇われママ・マリアが、
実は犯した罪を悔いてひっそり生きている意味ありげの人物。
そこへ吉兆をモデルにしたと思われる料亭で板前として働いていた紫紋が
店の廃業とともに無一文になりたどり着く・・・
ここから物語が展開していきます。

涙・涙でした。
絵画を題材にして食べている作家と思っていた私は彼女の想像力と筆力に圧倒されました。
何も聖書に出て来る名前や地名を使わなくても十分に文学作品として一流なのにと思いました。

罪を犯してしまった人、あるいは実際殺したりはしていないが死に追い込むことをしてしまい、
罪の意識に悩んでいるものは救われるのか?
「生きていれば喜ぶ人がいる、だれかを喜ばすことができる」
これが作者のたどり着いた結論です、私の読みでは。
それが当たっているかどうかは読者それぞれ、一読をお薦めします。

紹介者:A.Nさん


今なおアメリカは宗教への関心が深く、建設の精神からいってもア
メリカ史は宗教の考察なくては語れないはずなのに、
いまだ日本の学術書にはそういうのが見当たらない。
またアメリカはコロンブスの時代からいきなり植民地時代に飛び、
150年間が抜け落ちている書物が多い。
それを埋めるために本書は書かれた、著者はまずそう本書の趣旨を書きます。

イギリスの新大陸発見はなぜスペインやポルトガルに後れを取ったのか?
後れを取ったため不毛の地しかなかった。

スペインやポルトガルと違って王の絶大な資金支援がなかったが、
どのようにして渡航資金を作ったか?

スペインやポルトガルと違って富の略奪ではなく始めから移住目的だったのはなぜか?
そもそもなぜアメリカに渡ろうとしたか? 
宗教との深い関係?

移住を目的としたため、牧師や聖徒のみならず
労働者も連れてこなければならなかったの
で、
契約を作ることにより二分になることを防いだ。
そのことは移民の統合で成り立っている多元国家アメリカの原型と言えるのではないか?

・・・・・この後の肝心なところは長く込み入ってきて簡潔に書けません。

学術書ですが読みやすく面白いです。ただその後アメリカがどういう宗教活動を展開させて今に至るかは「反知性主義~アメリカが生んだ「熱病」の正体」の方が読みやすく気楽に読めると思います。


ツミデミック
一穂 ミチ
光文社
2023-11-22
紹介者:A.Nさん

「ツミデミック」とは、コロナの「パンデミック」と「罪」のかけ合わせた作者の造語です。
世界を震撼させたコロナの時代を書き留めておきたいと思って書いた小説だと
作者がどこかで書いていましたが、まさしくコロナ状況の日常、
しかもそれによって巻き起こされたと思われる罪を6つの短編にして載せています。
読みながら「あー、そんなこともあった」と懐かしくなるほど忘れていた、
いや、忘れている自分に驚きました。
まだコロナ菌は収まっていないのに。

最後の「さざなみドライブ」がパンデミックのパターンをよく網羅しています。
「パニック状態で身勝手な言動を取ってしまっただけじゃなく、
人間性の地金があらわになっただけとしか思えなくて、もう誰も信じられなかった」
と書かれていますが、それこそが、コロナによって暴き出された人間の罪かもしれません。
世界中を震え上がらせたコロナのパンデミックを思い出したい方、
長く記憶しておきたい方にお薦めです。

ピアノを尋ねて (新潮クレスト・ブックス)
クオ・チャンシェン
新潮社
2024-08-29
紹介者:M.Sさん


バルト海のほとりにて: 武官の妻の大東亜戦争
小野寺 百合子
共同通信社
1985-12-01
紹介者:M.Sさん


月と日の后(上) (PHP文芸文庫)
冲方 丁
PHP研究所
2023-11-08
紹介者:S.Tさん


はなとゆめ (角川文庫)
冲方 丁
KADOKAWA
2016-07-23
紹介者:S.Tさん


薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)
日向 夏
主婦の友社
2018-04-27
紹介者:S.Tさん


紹介者:S.Tさん


紹介者:S.Cさん


紹介者:S.Cさん


舌の上の階級闘争 「イギリス」を料理する
コモナーズ・キッチン
リトル・モア
2024-10-03
紹介者:A.Oさん

お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)
青山美智子
ポプラ社
2023-03-02
紹介者:A.Oさん


月の立つ林で
青山美智子
ポプラ社
2022-11-07
紹介者:A.Oさん


汝、星のごとく
凪良ゆう
講談社
2022-08-03
紹介者:M.Hさん


流浪の月 (創元文芸文庫)
凪良 ゆう
東京創元社
2022-02-26
紹介者:M.Hさん


破局 (河出文庫)
遠野遥
河出書房新社
2022-12-03
紹介者:M.Hさん


すべての、白いものたちの (河出文庫)
ハン・ガン
河出書房新社
2023-06-02
紹介者:T.Yさん


葵の残葉 (文春文庫)
奥山 景布子
文藝春秋
2019-12-05
紹介者:T.Yさん


葵のしずく
奥山 景布子
文藝春秋
2022-10-07
紹介者:T.Yさん


紹介者:M.Kさん


もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓
稲垣えみ子
マガジンハウス
2017-12-12
紹介者:M.Kさん


ミセス・ハリス、パリへ行く (角川文庫)
ポール・ギャリコ
KADOKAWA
2022-10-24
紹介者:S.Mさん


紹介者:S.Mさん


紹介者:S.Mさん

紹介者:S.Mさん


紹介者:S.Mさん

鹿鳴館の花は散らず
植松 三十里
PHP研究所
2024-07-24
紹介者:Y.Oさん


紹介者:Y.Oさん


まいまいつぶろ (幻冬舎単行本)
村木嵐
幻冬舎
2023-05-24
紹介者:Y.Oさん


とんちき :耕書堂青春譜
矢野 隆
新潮社
2020-12-16
紹介者:Y.Oさん


紹介者:Y.Oさん


本所おけら長屋(十九) (PHP文芸文庫)
畠山 健二
PHP研究所
2022-09-27
紹介者:Y.Oさん


本所おけら長屋(二十) (PHP文芸文庫)
畠山健二
PHP研究所
2023-03-02
紹介者:Y.Oさん


本所おけら長屋 外伝
畠山 健二
PHP研究所
2023-09-02
紹介者:Y.Oさん


泣くな研修医 (幻冬舎文庫)
中山 祐次郎
幻冬舎
2020-04-03
紹介者:Y.Oさん


サンドの女 三人屋 (実業之日本社文庫)
原田 ひ香
実業之日本社
2021-02-05
紹介者:Y.Oさん


紹介者:Y.Oさん


夢見る帝国図書館 (文春文庫)
中島 京子
文藝春秋
2022-05-10
紹介者:管理人A


紹介者:管理人A







































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