梅雨明けも、もうすぐ。
暑い夏がきますね。
暑い夏に負けず、上手に夏を乗り越えましょう。
紹介者:M.Kさん
紹介者:M.Hさん
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紹介者:M.Hさん
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紹介者:A.Nさん
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栞の会で紹介され図書館に行きましたら、思いかけずありました。
加藤陽子氏の「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」を持たない図書館に、
名前を聞かないこの本がよくぞあったとは正直言って驚きでした。
本書の著者の経歴は、彼女自身あとがきで書いていますが、
まったく上記のテーマとは関係なく、専門は<障害者教育史>だそうです。
ただ、著書に「ナチスAに抗った障害者
盲人オットー・ヴァイトのユダヤ人救済」(2,022年初出)というのがありますから、
秋田大学の名誉教授の後押しがあったとはいえ、
このような内容を著する下地は十分にあったと思われます。
最後に、主要参考文献が欧文を含めて夥しい数が記されていますが、
文の中では、引用した参考文献の題名を逐一挙げずことはせず、
彼女自身が、例えば残されたゲットーやホロコースト記念館等での実際の体験
(絶対見学はしているはず)を著することはしていません。
学術論文の形はとらず、自由な手法で書かれています。
文章は実にこなれていて、読み易く、文章を書くのに慣れた方なのだと思いました。
1943年ナチスの「ユダヤ人一掃」宣言でドイツ国内に残されたユダヤ人は約一万人、
彼らのうち終戦後生き残ったのは5000人、
約半数が生き延びられたのはなぜか?
彼らの逃避行を、誰(複数)が誰(複数)によって、
どういう方法(いくつかあり)で生き延び、戦後どうしたか?
(アメリカに亡命した人が多い)までを実名を挙げて細かく追っています。
ドイツ人のわが身をかけた救助、ドイツ人同士、
あるいはドイツ人とユダヤ人の連係プレーに驚きます。
「助けてほしい。」まず、この叫びが大事だと思いました。
「救援者たちがユダヤ人たちの手を差し伸べた動機はさまざまだった。
だが、救援者たちの事例から見て取れるのは、
彼らを最後に行動へと駆り立てたのは多くの場合、
政治的な心情よりも、むしろ人間としての素朴な心情だったであろう」
とありますが、素朴な心情のもとに行動に出て、
どんなに沢山のドイツ人が逮捕されたか、
その時始めて事の重大さに気づいた人も多かったと思います。
ましてや戦争で自分たちだけでさえ住むところも食べ物もなくなっていく中、
ユダヤ人の救助にまで手を差し伸べることは心情だけではいかないだろう、
そのことは思いました。
どんな人種でも官憲に追われながら生き延びる人は、
生きようとする強さなくては生き延びられないとは思いますが、
ここに書かれたユダヤ人の生きようとする姿には驚きます。
ネットワークを最大に活用する(助けを求める)、
頭脳(身分証明書偽造等)と危険を感知し素早く行動する度胸と俊敏さ、
家族が離れ離れになっても今は仕方ないと、
今何を採るかを選択する合理的な考え方、それとお金は必要です。
(災害も含め現金はある程度持っていて逃げるときには身につける、お忘れなく!)
土地や財産などはナチスによって没収されていますが、どう持っていたのか?
最後の頃になって街が焦土と化し、お金が何の価値も持たなくなると、
全くのボランティアの力で逃げ切るしかありませんでしたが、
始めの頃の多くは、きちっとお金や労働でお返しをしています。
それにしても、ユダヤ人はドイツ人に同化して生きていた、
つくづくそう思いました。
顔も身体もドイツ人といえば信じてもらえるほどの人が多かったのでしょうか。
ドイツ人に似せた偽造パスポートは実に役立っていますし、
塾を開いてゲシュタポのこどもたちにも人気の教師として日常を生きたり、
歌手として生きたり、ユダヤ人をかくまってくれないかと頼まれる人さえいたそうです。
そして、半分が生き残ったというのは
ドイツ人たちの勇気と英断失くしてはあり得ないと思いましたが、
その栄誉ある行動が、戦後、敗者となり、
しかも原因を作った国としてはなかなか言えなかった
(ユダヤ人の方が言い出した)とあるのは、
日本もそうだったよなと思うことしきりです。
原爆を落とすことが犯罪だと声を出すことがはばかられ、
おそらくは、日本の一般人が考えもしなかったアメリカの提示する民主的な政治体制、
そしてすぐに経済復興と結びついた朝鮮動乱、
それらが交錯してむしろ被害者意識の方が残ってしまった、
世界は勝者の歴史、そう思って現在進行形の戦争もみな戦っているのでしょうか?
作者自身、お気に入りの本だそうですが、彼女の本をすべて読んだわけではありませんが、
著書によっては、記者の書く記事のような書き方や性急な文の進め方が見られるのがあって、
気になっていたのですが、本書はそんなところがみじんも感じられず、良かったです。
参考文献を十分読みこなしたと思われるゆったりと丁寧な描写、
ひとつひとつの肌理細やかな表現が、
登場人物の置かれた状況やその時の心情を理解するための生け華となっている、
力作と思いました。
重光葵は、私は名前しか知りませんでしたが、
彼女の著作は、どちらかというとマイナーな人物を
歴史そのものの中で理解出来るので有難いです。
重光が、特に罪状もはっきりしないまま4年半も勾留されていたのには、驚きました。
ただこの間獄中で、外交官として過ごした体験談を著することができたのは、
戦争の実態を知る上での後々までの歴史の証人になれたことはいいことでした。
国家の重大事がほんの少数の、狭い世界の個人的感情も含めて決まっていく、
東条英機が重光に獄中で出会った時「あの戦争はだれにも止められなかった」、
何と無責任な言い様か、松岡も含めて責任転嫁が多すぎ、
マスコミのいい加減さ、天皇をGHQに逮捕されないようにと最後まで気遣う、
それってどうなの?こんなのを国のリーダーにした日本人の不幸、
いや、日本の政治システムのまずさ、日本人そのものの気質の問題?エトセトラ・・・
感想は沢山ありましたが、小説家はある意味罪作りだよなあと思いました。
その人物に思い入れがあるから、細かいところまで色々調べ、
登場人物の世間一般の仮面をいったん破壊し自分なりの想像で人物像を作り上げて書くのでしょうが、当たり前ですが、重光葵の何と魅力的なことか?
作者の惚れ具合が読者にも伝わるわけです。
それだけでなく、東条にせよ松岡にせよ、
個人的な心情を植松さんの優しい心で書かれると、
ほろりとこちらまで同情してしまいます。
と、いうわけで私は次に加藤陽子氏の「戦争まで~歴史を決めた交渉と日本の失敗」
を読み始めたのでした。
紹介者:A.Oさん
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紹介者:管理人A
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